PXA30は、大同特殊鋼株式会社が開発したプラスチック金型用プリハードン鋼です。
従来のAISIP20改良鋼をベースに、鏡面磨き時のピンホール原因となる介在物を低減し、鏡面性を改善した汎用プラスチック金型用鋼です。1
この材料は、従来のAISI P20改良鋼として知られており、優れた特性を持つことから、金型業界で広く使用されています。
PXA30の材質特長
PXA30は以下の特徴を持つプリハードン鋼です。
納入時硬さ
30〜33HRC
溶接性(SCM系)
優れている
被削性
良好
シボ加工性
優れている
放電加工性
良好
PXA30の具体的な材質特長については、メーカーである大同特殊鋼株式会社は下記のように記載しております1。
鏡面性…製造方法を改善することで、従来のP20改良鋼に比べ酸化物系の非金属介在物を低減し、鏡面品質の安定化を図りました。
基本特性…従来のP20改良鋼をベースにしており、硬さ・窒化特性従来材と同等です。また、機械的特性や放電加工性は同等以上です。
PXA30はマルチに使える素材です。
弊社では、性能が必要であったり複雑な形状を求められる部分で使用することが多いです。
またプラスチック金型用ではありますが、ゴム金型でも使います。
PXA30とPX5の比較
PXA30はPX5の改良鋼であるという情報は、メーカーの大同特殊鋼株式会社からは発表されておりません。
あくまでもP20の改良鋼として言及されています。
ただし、大同特殊鋼株式会社の「プラスチック金型用鋼 物理特性一覧2」では、硬さ、熱膨張係数、熱伝導率、比熱、ヤング率、剛性率、ポアソン比は同じように記載されています。
弊社の仕入れ担当は、PX5の改良鋼として、PXA30が発売されたと記憶しております。
現在、日本では手に入れることはできませんので、PXA30を使用しております。
PXA30の相当材
PXA30は大同特殊鋼の商品名ですが、他社製品にも相当品が存在します。
オーエスジー株式会社がプラスチック金型用鋼のブランド対照表3を公開しております。そこに詳細が記載されています。
弊社では相当材として下記を使用することが多いです。
相当規格 | 日本高周波鋼業 | 山陽特殊製鋼 |
JIS:SCM(改) | KPM30 | PCM30 |
PXA30の相当材「KPM30」
PXA30の相当材「PCM30」
相当材にあたる、KPM30・PCM30と比べ、加工性などに関しても同等の印象で、あまり違いは感じません。
ゴム金型に関する材質はこちら
まとめ
PXA30は、P20を改良したプラスチック金型用プリハードン鋼であり、優れた加工性と安定した品質を提供します。その特性から、高精度で複雑な形状の金型製作に適しており、様々な産業分野で活用されています。他社製品との互換性もあり、金型製作において柔軟な材料選択が可能です。
ゴム、プラスチック金型の材質に関するご相談、お困りごとなどありましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
参考文献
- 大同特殊鋼株式会社 「大同のプラスチック金型用鋼シリーズ PXA30」
https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/products/tool/pxa30.pdf ↩︎ - 大同特殊鋼株式会社 「プラスチック金型用鋼物理特性一覧」https://www.daido.co.jp/common/pdf/pages/products/tool/sd2307_pla_jp.pdf ↩︎
- オーエスジー株式会社 「プラスチック金型用鋼のブランド対照表」 https://www.osg.co.jp/media_dl/technical/file/die_materials.pdf ↩︎