ゴム成形工程において、金型の適切なメンテナンスは、製品品質を保つために欠かせない作業です。
そして、金型汚染されている金型は、洗浄が必要不可欠です。
金型に付着する汚れや残留物を効率的に除去することで、金型寿命を延ばし、生産効率を向上させることができます。本記事では、ゴム金型洗浄の具体的な方法や、それに伴うメンテナンスの重要ポイントを詳しく解説します。
ゴム金型の洗浄が不可欠な理由とその重要性
ゴム金型汚染の理由としては、ゴムの成分、配合剤、加硫条件など多岐にわたります。
その中で、ゴム金型の洗浄は、製品品質を維持し、生産効率を高めるために欠かせない工程です。金型表面に付着する汚れや残留物は、成形不良や製品寸法の不一致を引き起こす原因となります。また、汚れが蓄積すると、金型の劣化が早まり寿命が短くなる可能性もあります。
加えて、ゴム金型の洗浄を怠ると、離型性が悪化し、生産サイクルが延びることでコスト増につながるリスクもあります。定期的な洗浄は、品質維持だけでなく、生産効率やコスト削減の観点からも極めて重要です。
ゴム金型の洗浄方法とメンテナンスの全体像
ゴム金型のメンテナンスにおいて、洗浄は最も基本的で重要なプロセスの一つです。洗浄作業を適切に行うことで、金型表面に付着した汚れや残留物を取り除き、その後の点検や補修作業が円滑に進みます。これにより、金型の寿命を延ばし、生産効率を向上させるための基盤が整います。
洗浄は、金型メンテナンス全体の中で以下のような役割を果たします:
- トラブルの原因を明確化:洗浄によって金型表面を清潔に保つことで、摩耗や傷、パーティングラインの劣化などの問題箇所を的確に発見できます。
- メンテナンス効率の向上:汚れや残留物が除去されている状態では、寸法精度の確認や潤滑剤の塗布がスムーズに行えます。
- 金型性能の安定化:洗浄により離型性を向上させ、製品不良の発生を抑えることができます。
ゴム金型の洗浄方法
ゴム金型を洗浄するには、大きく分けて、金型を取り外し洗浄する方法と、金型を装着した状態のまま洗浄する方法があります1。
金型を取り外して洗浄
【湿式】
- アルカリ洗浄
- 酸洗浄
- 有機溶剤による洗浄
- 酸化剤による洗浄
- 超臨界水洗浄
- 超臨界二酸化炭素洗浄
- 酸化チタン水溶液洗浄
- 水洗い(各種ビーズ使用)
- 水洗い(ウォータージェット)
- 超音波洗浄
- 電解洗浄
【乾式】
- プラズマ洗浄
- レーザー洗浄
- 機械的洗浄(ブラスト)
金型を装着したまま洗浄
- ドライアイス粒子噴射
- モールドクリーニングラバー
- サブ使用
- 洗浄剤使用
ゴム金型の洗浄法を解説|一般的な金型洗浄手法5選
洗浄剤使用|化学洗浄による効率アップ
専用の金型洗浄剤を使用して、汚れを溶解または分解する方法です。洗浄剤は、汚れの種類や金型の材質に応じて選択する必要があります。
- メリット:作業後に対応可能。金型表面に直接負担をかけず、汚れを落とせる。
超音波洗浄|ゴム金型の高効率クリーニング
超音波洗浄は、微細な汚れや複雑な形状の金型に付着した残留物を効果的に除去する洗浄方法です。
超音波洗浄の原理
金型を溶剤に浸漬させ,超音波により発生するキャビテーションと溶剤の溶解力を利用して汚れを除去する方法である.2
超音波が液体中に発生させるキャビテーション(気泡の発生と破裂)により、手作業では届きにくい部分の汚れを除去します。
- メリット:人力での作業ではないため、手間がかからず、高精度な洗浄が可能。金型へのダメージが少ない。
電解洗浄|錆びや付着物の効果的な除去方法
電解洗浄は、化学反応を利用して金型表面の錆や頑固な汚れを分解・除去する方法です。
電解洗浄の原理
電解洗浄液を電解したときに発生するガスによって汚れを押し上げて剥離すること3
- メリット:錆や酸化膜を効率的に除去。
ブラスト洗浄|頑固な汚れの物理的除去
ブラスト洗浄は、特殊な微粒子を圧縮空気で吹き付け、金型表面の頑固な汚れや焦げ付きを除去する方法です。物理的な摩擦を利用するため、特に厚い付着物の除去に効果的です。
- メリット:高い洗浄力で、短時間で汚れを除去可能。ゴムの残留物や離型剤の汚れを除去。
ブラスト洗浄をご希望であれば、弊社でも対応できますので、まずはお気軽にご相談くださいませ。
ドライアイス粒子噴霧洗浄|母材を傷つけずに洗浄できる
ブラストガンのノズルから発射されるペレット状のドライアイスを圧縮空気により、金型表面に噴き付け、洗浄対象物にクラックが生じ、汚染物と金型との間にドライアイスが入り、気化する力を利用してはく離する4方法です。
- メリット:作業が簡単で時間を短縮可能。金型へのダメージが少なく、環境に優しい。
まとめ|ゴム金型の洗浄とメンテナンスの重要ポイント
ゴム金型の洗浄とメンテナンスは、製品品質を向上させ、金型の寿命を延ばし、生産効率を最適化するために欠かせない工程です。洗浄はメンテナンスの基礎であり、金型表面に付着した汚れやゴムの残留物を取り除くことで、次のメンテナンス作業を円滑に進める土台を作ります。また、適切なメンテナンスを行うことで、金型のトラブルを未然に防ぎ、安定した生産体制を維持することが可能です。
本記事で紹介した超音波洗浄や電解洗浄、ブラスト洗浄、洗浄剤の使用、ドライアイスといった洗浄方法は、それぞれ特有のメリットがあります。金型の形状や材質、汚れの種類に応じて最適な方法を選ぶことが、効果的な洗浄の鍵となります。
さらに、洗浄後には定期的な点検や部品の補修を含むメンテナンスを実施し、金型の性能を最大限に発揮させることが重要です。
ゴム金型の洗浄とメンテナンスを適切に行うことで、次のような効果が得られます:
製品品質の向上
金型表面の清潔さが、製品の外観や寸法精度を改善。
金型寿命の延長
摩耗や損傷を最小限に抑え、長期間の使用を実現。
生産効率の向上
離型性が改善され、生産サイクルタイムが短縮。
これらの取り組みは、ゴム成形工程全体の効率化とコスト削減にもつながります。
ゴム金型の洗浄とメンテナンスを継続的に実施し、高い品質での製品生産を行っていくことができます。
弊社は、ゴム金型のメンテナンスにも対応しております。
メンテナンスについてご不明点やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
ゴム金型に関してはこちらの記事も合わせてご覧ください。
参考文献
- 山口 幸一 「第139回ゴム技術シンポジウム テキスト」p62 ↩︎
- 長田和真・古屋雅章・尾形正岐・早川亮・阿部治・石黒輝雄・西村通喜・山田博之・八代浩二・近藤英一「プラスチック射出成形金型の洗浄に関する研究(第 2 報)」https://www.pref.yamanashi.jp/documents/91024/report_h30_07.pdf ↩︎
- Kazuhiro Yoshizawa, 一裕 吉澤 「電解洗浄装置及び電解洗浄方法」https://patents.google.com/patent/JP2009242931A/ja ↩︎
- (株)グリーンテックジャパン 技術資料(2008) ※山口幸一 「金型の汚染と洗浄に関する最近の動向」日本ゴム協会誌 第82巻 第7号(2009) ↩︎