はじめに:ゴム金型の重要性と用途
ゴム製品は、日常生活から工業用途まで広範囲にわたって利用されていますが、その製造過程において欠かせないのが金型です。金型は、製品の形状や品質に直結するため、どのような材質を選ぶかが非常に重要です。特に、ゴムはその種類によって特性が大きく異なり、それに応じた適切な金型材質を選定することが求められます。例えば、耐摩耗性や温度変化に強い材質が必要な場合もあれば、コスト重視で選ばれることもあります。
この記事では、まず一般的なゴムの種類と、それぞれに適した金型材質について解説します。その後、EPDMゴムとウェザーストリップ製造に焦点を当て、具体的な材質選定の事例を紹介します。
ゴムの種類とそれに適した金型材質
ゴムには、さまざまな種類がありますが、代表的なものとして天然ゴム(NR)、シリコーンゴム(VMQ)、ニトリルゴム(NBR)、そしてEPDMゴムが挙げられます。各ゴムは特有の物理的・化学的特性を持っており、用途によって適した材質を選定することが求められます。
ゴムの種類 | 使用されている金属素材 |
NR | -S45C ~ S55C |
BR | S45C, SUS, 303, DDV |
NBR | S45 ~ 55C, PSL |
EPDM | S45C, S55C, NAK, SS-41, SKD-11, SCM鋼 |
CR | S45 ~ 55C, SS-11 |
Q | AL合金, S55C |
FKM | S45 ~ 50C, ステンレス鋼 |
ACM | SUS420, |
ECO | S45 ~ 50C. ステンレス鋼 |
成形するゴム材料によって、金型製作で使用する金属素材を選び、加工します。
実際に弊社が製造する、自動車のウェザーストリップの接続部分の金型を製作する場合の材料選定を例に紹介いたします。
【実例】ウェザーストリップ金型で見る、ゴム金型の金属材質選定
ウェザーストリップとは?
ウェザーストリップは、車両のドアや窓枠を密封し、雨風や騒音から車内を保護する役割を果たします。
その中でも弊社、ウェザーストリップというゴムホースのようなものを接続させる赤枠部分の金型を製造しております。この部分における金型に関して説明いたします。
ドアのウェザーストリップのゴム材料「エチレンプロピレンゴム(EPDM)」
ドアのウェザーストリップには、エチレンプロピレンゴム(EPDM)使用されることが多いです。
EPDMは、耐候性(屋外で使用された場合に、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)、耐水性、耐熱性、耐オゾン性などの特性があります。こうした特性から、自動車のドアシールや窓枠に使われるウェザーストリップには、EPDMゴムが多く採用されています。
これにより、外部環境から車内を保護し、騒音の軽減にも貢献します。
ウェザーストリップ金型の材質選定
EPDMが採用されることの多い、ドアのウェザーストリップのゴム金型は、比較的高い硬度ですが被削性が優れているかつ鏡面性も良い、SCM(改)が選ばれることが多いです。
磨いてもすが少ない、ピンホールも出にくいため、金型の素材として好まれます。
しかし、全て同じ材質で金型製作はしません。
弊社の場合、SCM(改)はゴム金型の中でも製品の成形に使われる中芯などの部分などで使用します。
その中でも、大同特殊鋼のPXA30、日本高周波鋼業のKPM30、山陽特殊製鋼株式会社のPCM30を用いて加工することが多いです。
金型のプレートは、SS400の一般構造用圧延鋼材、S50Cの機械構造用炭素鋼鋼材を使い、金型全体のコストを調整しております。
PXA30やKPM30、PCM30はプラスチック金型用鋼として知られておりますが、ゴム金型を製作する場合も、プラスチック金型用鋼を使用いたします。
ゴム金型でも使用する金型用鋼の解説はこちら
まとめ:ゴム金型材質選択の重要性
ゴム金型の材質選択は、製品の量産成功に不可欠な要素です。製品を企画するメーカーから材質指定されることが多いですが、各金型メーカーは、これまでの経験、知見に沿って最適な金属材質を知っていると思いますので、ぜひ各金型メーカーに問い合わせてみてください。
株式会社エムエス製作所は、ウェザーストリップをはじめとして、ゴム製品の金型を製作しております。
ゴム金型のことでお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- 引用:日本ゴム協会金型研究分科会(2014), ゴム金型技術, ポスティコーポレーション, p11 ↩︎